教養過程


 医学部では最初の二年間、教養過程と称して数学、物理、化学、英語、フランス語、ドイツ語、ラテン語等々の講義を受ける。

 これがまた全然面白くなく、あのいやらしい大学受験を終えてまでなんで数学やら理科やら続けねばならんのか。今役に立っているのは三角関数くらいである。

 もちろん、外国語やラテン語は医学を勉強する上で役立つというよりむしろ必須といえる。ドイツ語だけは面白かった。もうほとんど忘れたけど。

 これについてエピソードがある。聞いた話だが語学の苦手な学生が「俺は医学をすべて日本語だけで勉強する。よって外国語は一切勉強しない」と豪語し、当然のようにあっさり挫折して英語・ドイツ語を一からやりなおすのに随分苦労したそうな。

 役に立たない筆頭が数学、物理、化学の類であって、こんなもの高校で覚えた知識で充分過ぎる。

 大学では更に訳の分らぬ記号・符号が登場する。これら無意味な符号群にはこれらを丸暗記できねば試験に落ち、教授の存在感を際立たせることができる。教授には便利な小道具であろう。

 面白いのは教授達が

「どうせ学生ども、医学に関係ないワシらの講義など聞きたくも無かろう」

 と自覚していることである。数学や物理の教授でありながら医学部の学生を相手にせねばならない不満、いらだちがあったのだろうか。事実、こちらは一刻も早くいわゆる受験科目から離れ、医学を学びたかった。

「出欠は取らない」などといいつつひそかに数えてたり(学生の中にスパイでも紛れ込ませてたんじゃないか)再試験の日程をわざわざ夏休みの真ん中に持ってきたり、とにかくやることが実にいやらしい。


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