天体望遠鏡

☆ 架台

最もポピュラーなのがドイツ式赤道儀であろう。積載鏡筒も短いものから長いものまで制限なしの利点がある。

ドイツ式の困ったところは鏡筒が極軸より西にあるか東にあるかによって写野の向きが 180 度変わることである。勿論接眼部を 180 度回転させれば問題は解決する。接眼部を回転させず、画像をソフトウェア的にひっくり返すこともできるが思わぬミスを引き起こすことがあるので私は接眼部を回転させ、画面の上側が常に北になるようにしている。

また、望遠鏡の向きを大きく変える場合、赤道儀の動きが大変複雑なことも慣れぬ人にはやっかいな問題かも知れない。(自動導入などがなかった時代は当たり前のように手で動かしていたものだが)さらに自動導入装置にバグがある場合(バグのないソフトなどおそらく皆無であろう)よく見ていないととんでもない動き方をして鏡筒と脚がぶつかったりする危険があるし、接眼部すなわち冷却 CCD カメラからのびる各種ケーブルに無理な力が加わる恐れもある。

最近ではフォーク式赤道儀が流行している。ドイツ式のように鏡筒の位置と写野の関係がややこしくなることが少なく、鏡筒部の動きも単純で使いやすい。

問題は長い鏡筒が積載不能ということである。北極付近の一部を最初から観測しないと決めるならばかまわないが、通常フォーク式に積載する鏡筒はカセグレイン、シュミットカセグレイン等、鏡筒の短いものとなる。

フォーク式経緯儀も流行している。もちろんコンピュータ制御で恒星時追尾を行うのだが、追尾中に写野が回転してしまうのは致命的である。回転をキャンセルする機構が市販されているかどうか知らないが、自作するにはプログラミングの知識が要求される。

その他ヨーク式、イギリス式などは一般的でないので省略する。

☆ 自動導入装置

個人的にはこれは不要であり、望遠鏡の向きをデジタル表示してくれるだけで充分と思っている。

ある星を視野の中央に入れてシンクロさせ、近辺の天体に移動するだけなら精度よく自動導入も使えるが、望遠鏡を大きく振ると CCD の狭い写野に目的天体が入ることはまずない。そこでファインダーを覗き、比較的明るい恒星を写野中央にもっていき、再シンクロさせることになる。

シンクロさせた天体と観測対象天体が近ければ自動導入の精度は上がるが(自動導入の必要性もないが)、バグのためとんでもない方向へ動き出すこともあるから、対象天体の位置と望遠鏡の向いている方向を見て手動(パソコン上のボタンを押す)にて導入を行うことにしている。(バグさえなければもっと快適に使えるはず、、、)

赤道儀、鏡筒が頑丈で組み付け精度もよく、極軸が充分合っていても大気による浮き上がり、鏡筒自重によるたわみなどの影響で自動導入に完璧を求めることはできない。大気差の影響は案外大きいもので、例えば恒星時駆動速度を子午線上、天の赤道付近で合わせたとする。そのまま地平高度 20 度くらいの天体を観測すると赤道儀の駆動速度が相対的に速くなるその度合いは驚くほどである。低空を観測する場合、大気差自動補正式の赤道儀が望ましい。

重いカメラを取り外しアイピースで見ながら極軸を合わせると、望遠鏡の向きに関わらず追尾は良好になる。安心してカメラを取り付けると極軸が合っていないようなつまり恒星の南北方向のズレが現れる。鏡筒のたわみによるものであろう。完璧な追尾は絶対に得られないと断言してもよい。

☆ 鏡筒

ニュートン式 最も単純な光学系であり、コマ収差は CCD の写野の狭さに助けられて無視できる。焦点比は口径に応じて自由に選べるが一般的には 4 から 6 程度であろう。価格も安い。バックフォーカスを長く取ろうとすれば副鏡が大きくなるという不都合がある。

カセグレイン式 焦点比が 12 - 15 程度であり、小口径にこのタイプは少ないから焦点距離が 2 - 3 メートルと長くなりがちである。ニュートン式と共に純反射系のため色収差がなく、フィルターを用いる際にピントを合わせ直す必要がない。

シュミットカセグレイン式 ほとんどがアメリカ製であり驚くほど安価になっている。焦点比は 6.3 か 10 と決まっているらしい。40 センチ F 10 となると焦点距離が 4000 ミリ。これをうまく追尾できる赤道儀があるかどうか?

マクストフカセグレイン式 かつては高嶺の花であったこの光学系も笠井トレーディングを通してロシア製が安価に購入できるようになった。とはいえ 30 センチ F 10 でおよそ 150 万円であるからニュートンタイプよりはずっと高い。上記シュミットカセグレインとともに、主鏡移動合焦タイプが多く、バックフォーカス 300 ミリなどというのも珍しくないからカメラの前にフィルターなどアクセサリー類を入れるには都合がよい反面、ミラーシフトといって合焦時に主鏡が傾くことによる不快がある。

屈折式 CCD で観測をやるのなら口径 20 センチは欲しいところだが、20 センチ屈折ともなると目玉が飛び出るほど高価であり、焦点比を小さくできないため全体に随分大きくなる。それを納めるドーム径もシュミットカセグレインと比較して同口径で 2 - 3 倍位になりそうである。CCD は赤に感度が高いから色収差の影響も大きいと思われる。

カメラ用レンズ 300 - 600 ミリ程度の蛍石や ED ガラスを用いた望遠レンズでもやはり色収差の影響が残ると思うが、絞り込んだり、フィルターをうまく使うなどして収差をできるだけ除去し、広視野・高感度カメラとして掃天に使えるかも知れない。LINEAR の守備範囲外である太陽付近の監視を続ければ新彗星発見の可能性も??

☆ 口径

最近のアマチュアの標準が 20 センチクラスであり、シュミットカセグレインが驚くほど安価であることを考えると 40 センチクラスを導入することも夢ではない。15 センチクラスでは鏡筒全体が小さく、カメラを取り付けるとバランスを取るのが難しくなる場合もある。

☆ 焦点距離と焦点比

一画素あたりの解像度(秒角)= 206 * 画素サイズ(ミクロン)/ 焦点距離(ミリ)

一画素の大きさを 10 ミクロンとし、解像度 2" とすると必要な焦点距離は約 1000 ミリとなる。画素サイズが 24 ミクロンなら 2400 ミリが必要になるが私は 1800 ミリの組み合わせで問題ない測定位置精度を得ているから現実には上式の 3 / 4 倍の焦点距離でも構わないことになる。

出まわっているカメラの画素サイズを考えると位置測定には 1500 - 2000 ミリ程度の焦点距離があれば充分と思われる。

恒星の極限等級は焦点距離に比例する。つまり同口径であれば焦点比の大きい光学系ほど暗い星が写る。しかし、彗星などぼんやりした天体に対しては逆に明るい光学系の方が写りやすい。高速移動する小惑星も然りである。明るい光学系は光の害を受けやすいから、空の明るいところで彗星を観測する場合などは焦点比の選択は難しい。

シュミットカセグレイン、マクストフカセグレインなどではレデューサーを入れて焦点距離を縮めることができる。焦点比 10 を 8 あるいは 6 に変更できるわけである。

☆ まとめ

予算を考えず「こういう望遠鏡を使いたい」望遠鏡は以下のようなものである。

架台:フォーク式赤道儀

口径:40 - 50 センチ、焦点比 8 - 10。(このスペックだとリッチークレチアンになろうか。都会地在住でなければ口径 100 センチ)

現実的には焦点距離 2000 ミリを少なくとも 60 秒間追尾できる赤道儀に口径 20 - 25 センチ、焦点比 6 - 10 シュミットカセグレインといったところだろう。

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