No.044 <比良>中谷右俣溯行 1


1994.01.01.Sat.曇りときどき雪

0730 木戸集落(130m)発 随分寒いので沢山着て出発。湖西道路をくぐって道路沿いを北上する。

0812 荒川峠方面分岐(340m) 暑くなったのでセーターを脱いで一休み。
0820 発 分岐を右に見送り、そのまま林道を進むとなにやら堀立て小屋があった。やり過ごすと大堰堤の下に出てしまい逆戻り。小屋の近くから右へ攀じ登る。堰堤の上に立つとそこから先はバージンスノーであった。

0850 堰堤を越えたところで(500m)地図とコンパスを取り出し、現在位置と進むべき方向を確める。今日の目的は中谷右俣である。

左俣は地図を見るほどに恐ろしげな谷で、特に源頭付近が岩マークだらけである。下手をすると稜線へ出られないかも知れない。遠目にもゴツゴツした岩が見えている。再度確認してから右俣へ。これより先は稜線までほぼ一直線であるから道を間違える心配はないだろう。

0934 (540m)このあたりから先は結構立派な滝など多数あって沢屋さんにも満足いただけるのではないだろうか。なにぶん寒いのでなるべく濡れないようにしながら遡行するが、一度足首の上まで浸かってしまった。しかし中には滲みてこない。スパッツのおかげ。

どうしても直登できない滝があって右岸を巻いているときに足を滑らせて 3 メートルほど滑落した。幸い、岩に向き合ったままの姿勢、斜度も比較的緩やかで、更に足先が常に岩に接していたためブレーキになったのかも知れない。首から下げたカメラ(ニコマート FTn)が岩と胸の間で悲鳴をあげている。あー、とうとう落ちたかと思っているうちに両足が同時に着地、次に尻が着地、続いてザックが着地した結果仰向けの姿になってしまった。ケツ以外に痛いところはない。(久しぶりに使ったこのカメラは裏蓋スポンジが劣化していて光漏れがあり、写真のデキがよくない)

どうしてもここを登らねば先に進めないので、6 本爪アイゼンを装着した。黄色いヘルメットも被る。

0940 発 アイゼンをつけたらいましがた落ちてしまった同じ岩場を簡単に登れるではないか!6 本爪とはいえ大したものである。

両岸は雪が深く、たいそう歩きにくいのでなるべく水際を歩くようにする。休む場所もあまりない。そこらじゅうにぶら下がっているツララを折って口に放り込みつつ歩く。

1030 (720m)右岸へ退避して雪上でひと休み。今日は最初から合羽上下を着ているので座布団なしでどこに座っても気にしなくてよい。ポットの紅茶を 200ml 程飲む。
1040 発 雪が深くなってきた。谷も深くなってきた。河原歩きも次第に登攀の様相を呈してきて、軍手の上にゴアの薄手手袋を付けているだけでは水が滲みてくる。しかし動いている間は湿っぽいだけで冷たくは感じない。傾斜も急になってきてどんどん高度を稼ぐのがわかる。登ったばかりの滝を見おろすと恐いくらいである。念のために 9 ミリ 40 メートルザイルやハーネス、エイト環、カラビナなども持ってきたのだが、いざここを降りようと思ってもザイルをかける支点がない。ハーケンとハンマーも必要なようだ。

1140 (930m)源流 随分高いところに源流があるものだ。

ますます傾斜が増していく。雪はフカフカで、踏込むと足は地面にまで届いてしまう。深さは膝あたり。雪の付いていない場所を観察すると地面は花崗岩の風化したものらしく、急傾斜のため 6 本爪のアイゼンが利かない。アイゼンに前爪があれば・・・と思う。なんとか軽登山靴に 12 本爪が付かないものだろうか?アイゼンが利かないから一歩踏出して膝まで没した後ズリズリと元の位置まで戻ってしまう。

枝に氷が屋台のソーセージ状に巻付いたような植物の群生が行く手を阻む。どうしてもここを通過できず、少し下って展望のきく位置へトラバースする途中で今度は 10 メートルほど滑り落ちた。

右方向を見ると植物がチラホラといった感じだったので這いずりながらそちらへ向う。首から下げたカメラはフッドが雪を掬って正面から見ると真っ白けの蓋をしたようである。もうボロボロ、可哀想に。ファインダーも曇る。枝に雪をいっぱい付けた植物はけっこう頑丈にできていて、いい手がかり足がかりになった。しかし膝まで没した足をひっこぬきながら進むのは疲れる。

1208 (1000m)稜線上 70m の標高差を稼ぐのに 30 分もかかってしまった。

二ヶ月前、ここを通ったが様子が違う。左手に打見山が見えるのでその方向へ行こうとするとまたびわ湖側の谷に下ってしまいそうである。稜線を今少し西へ進みウロウロしていたらビニールテープと縦走路らしき窪地が見つかった。やれやれ。しかし縦走路にも踏み跡はなくさすがに膝まで没することはないが無雪期の半分くらいのスピードでしか歩けない。

1235 木戸峠(990m)キャンプ場への踏み跡を発見。キャンプ場へ向う途中、一人のハイカーが昼メシを食べていた。元日にこんなところで人に会うとは。少々驚き「あっ、こんにちは」と挨拶して通過。

キャンプ場の屋根付炊事場に座り込んでまずはセーターを着る。濡れた手袋を脱いで予備の軍手に替える。濡れた手袋はすぐにカチカチになった。これだけではさすがに手が冷える。

アルコールバーナーを取出し、梅しそおにぎり二個を崩して雑炊にする。雑炊ができあがった頃もう一つの小さい鍋を火にかける。雑炊を食べ終り、フルーツ缶詰も食べ終る頃に湯が沸いたのでインスタントカプチーノ二袋を混ぜる。暖かいものがありがたい。

今回はアルコールバーナーの燃料として、薬局で売っているメタノール 80%、イソプロパノール 20% 混合燃料(サイフォン用と思われる)を使用したら具合のいい炎が出た。アルコールバーナーに純エタノールでは炎が出すぎて具合が悪かったのだ。気温が低いせいか 50cc の燃料の 7 割くらいを消費した。

1330 発 寒くなってきた。セーターを脱いで出発。先ほどの人は木戸峠から北へ向ったらしい。

クロトノハゲ方面へ。先ほどの人のものと思われる踏み跡があったので利用させて貰う。ここでも膝近くまで没している。打見山を巻くこの水平道はびわ湖側が切れ込んでいて大変恐い。そして木製の梯子が数ヶ所かかっているがこれも恐い。落ちて死ぬほどの崖ではないが這い上がるに相当苦労すると見受けられる。クロトノハゲからどんどん下り、天狗杉を過ぎてまもなく雪がなくなってきた。

1430 (700m)つまづきやすくなってきたのでアイゼンを脱ぐ。ストックは下りで特に有用である。

1510 木戸集落(110m)着

歩行時間 0624
休憩時間 0116
合計時間 0740


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