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No.111 <大峰>四つの普賢岳

1997.03.19.Wed.雨

0430 起床

0550 豊中の自宅発(0 Km) 吹田 I.C.から近畿道に入り松原ジャンクション経由で名阪道。R 370、R 169 を南下する。道路は休日よりも混雑している。

0810 和佐又ヒュッテ(142 Km) ハイカーの車は見あたらない。小雨はやまず、このままとんぼ返りするべきかどうか車内でしばらく思案する。

ヒュッテに入ると宿泊客はおらず、今起きたばかりというおかみさんが出てきて「あらいらっしゃい、今日は一人?皆さん元気?」
ヒュッテの食堂で身繕いをして出発する。気温 6℃。山はガスに見え隠れしていて雪がちらりと見える程度。今年は雪解けが早いとのこと。

0830 出発
0840 伯母峰峠方面分岐 今回は笙の窟尾根を歩くことにする。小さい谷と尾根の登降を繰返し、ともすれば滑りそうになる頼りなげなトラバースを行く。道の真ん中から何かの芽がでている。写真を撮る。

【新芽】

0910 目的の笙の窟尾根は近づくに連れ分かりにくくなる。伯母峰へ向かうルートが右折・急降下しているあたりで尾根に取りついたが一つ西側に入り込んだようだ。一般路を外れて上へ。すぐに酷い笹薮に突入。カッパ上とスパッツは着けていたものの瞬時にして頭から濡れ鼠。暑いのでカッターを脱ぐ。

この薮でただでさえ防水性の乏しくなっているカッパの左袖を切り裂いてしまった。ザックに括り付けたピッケルのキャップも枝にひっかけて失った。

獣道を頼りに少しでも薮の少ないところを選んで歩く。しばらく行くうちに尾根を間違えていることに気づいたのでトラバース気味に東へ。間近に人の声が聴こえた。のちヒュッテに帰ったときおかみさんに他のハイカーが来たかどうか尋ねたが誰もこなかったとのことなので恐らく伯母峰から和佐又ヒュッテを素通りしてバス停へ下ったのだろう。

0950 笙の窟尾根 ひょっこりと広いルートに出た。やれやれ。比較的なだらかな尾根は登るに連れ傾斜を増す。北側斜面には雪が多く残っているが尾根上は歩きやすい。

立派なツノを持ったシカかカモシカだかに出会う。距離は 20 メートルくらい。あいにく雨のためカメラはザックの中である。目が合った途端に跳んで逃げてしまった。

やがて傾斜がきつくなり巨岩が立ちふさがる。北側も南側も切り立っていてトラバースは困難である。巨岩の真ん中付近の僅かな割れ目を狙って直登する。斜度は 60 - 70 度程度。登りきると平和な頂上である。日本岳に着いた、後は緩斜面を下るだけと安心したのも束の間...

1030 曽孫普賢岳 小普賢岳や大日山、バリゴヤの頭、七面山などに似た、如何にも大峰らしいピークである。ホッとして腰を下ろしおにぎりを食べる。一瞬がスが晴れ、進行方向に数十メートル高い急峻なピークが見えた。石の鼻か思ったがそれならあの巨岩が見えるはずだしその手前の鞍部の様子がどうも違う。嫌な予感は概ね的中する。

【曽孫普賢岳から孫普賢岳を望む】

1040 歩き出してすぐ「曽孫普賢 1505」の標示板を見つけた。日本岳なら「日本岳」とあるはず。

ここからの降下に難儀する。南は切り立ったナイフリッジで幅は奥穂高岳のウマノセの半分もなく傾斜は垂直に近い。この下は笙の窟付近と思われる。高度差は 50m 程度。引き返すには先ほどの崖を下らねばならない。不安感に襲われる。
下れそうなルートを探すのに時間を食われる。それでも何とか下り切り鞍部を通過して次のピークに取りつくとまたしても巨岩が眼前を遮る。今度は直登ができず凍りついた北側斜面をトラバースせねばならない。先ほどからシャクナゲの枝に背中のピッケルが引っかかるのが気になっていたこともありここでアイゼンとピッケルを使うことにする。今日一番緊張したのはこの付近だった。しかも今日に限ってツェルトとトランシーバーを忘れてきている。

1140 日本岳(孫普賢) 夏道一般路ならおそらく 5 分とかからない距離を 1 時間もかかった。
このピークもシャクナゲが多く雰囲気もいかにも大峰らしい。ちょっと休んで出発。天気もルートも険悪でのんびりする気分にならない。

【孫普賢岳(日本岳)から小普賢岳を望む】

1150 発 ここからの下りも案外厳しいものがあった。ルートを探すのに手間取り、難しい崖を難儀して下っているうちに固定ロープを見つけたのでこれの世話になって下る。すぐに見慣れた鞍部を見つけた。ツノのないシカ 3 頭に出会う。

鞍部で一安心。通常のルートなら 1 時間くらいで到着するこの地点まで既に 3 時間 20 分もかかっている。先行きが危ぶまれたがせめて石の鼻まではと登ることにする。ルートはざらめの残雪が点在する程度だがアイゼンは装着したまま。
1220 石の鼻 今日はここで終わりかなと感じたがおにぎりを食べると元気になった。ここから頂上まで無雪期なら 1 時間、現場までなら今日でも 1 時間、帰りに 2 時間とすると下山は 1530 頃と踏んで登り続けることに決めた。
素手の上からオーバーミトンのみ装着。風がないせいかそんなに寒く感じないのであいかわらずカッターも着ず、クロロファイバーの Tシャツにカッパのみ。
雨は降り続き、ガスに巻かれる陰鬱な天候が続く。

【石の鼻から小普賢岳への道】

1230 発 2 年前より雪が少ない。鉄梯子も約半数が露出している。しかしここから上は様相が一変するので気が抜けない。狭いトラバースにざらめ雪が硬く凍りついているところもあり緊張する。ピッケルを突き刺し一歩一歩を確実に踏み締めて行く。トレースは古そうなのが見られるがほとんど新雪に埋もれていてそこだけ周囲より白い。

人の声が聴こえたような気がした。新しいトレースもなく誰もいるはずがない。しばらく立ち止まって耳を澄ませるがもうなにも聴こえない。
小普賢岳の肩までは比較的緩斜面の登り。

大きな看板のごとき遭難碑(これは巷で評判が悪い)に書かれた詩を今回初めてじっくりと何度も読み返し、何とも寂しい気分になる。

ここから急降下。右側・地獄谷に注意を払いながらゆっくり進む。見上げるような急登にさしかかれば目的地は近い。

焚火跡にてやや前傾していたお地蔵さんの足元を固めておく。手を合わせて先に進む。

コルの鉄梯子は露出していた。北斜面下方を見れば雪は非常に多くて地獄谷の源頭が無雪期よりも近くに見える。

1310 事故現場 ここも雪がなく階段が露出していた。座り込んで線香を上げ、もの想いにふけりながら 3 つ目のお握りをゆっくり食べる。雨は雪に変わっている。

【階段に座り込んで下を見る】

1325 下山開始 曲がったツララを見つけたので足元を固め、ザックからカメラを取り出して撮影する。今回は低感度でしかも偏光フィルターを付けてきたためブレが心配。

1405 石の鼻 ここから下は雪も少ないのでアイゼンを外し左手に持って歩く。雪は雨に戻った。
日本岳の鞍部に雪があったのでまたアイゼンを装着。しかし数十メートル歩いただけでまた外す。
1425 笙の窟 水場は凍りついているが一部利用できる部分がある。2 年前は完全に氷の塊だった。
アイゼン、ピッケル、オーバーミトンをザックの中に片づける。
1440 発 もう雪はない。

1510 和佐又ヒュッテ 靴に着いた泥を車の雑巾で落とし、やはり泥だらけのスパッツをポリ袋に押し込んでトランクへ。ヒュッテに入ってカッパを脱ぐ。折角車を使うのだから着替えくらいは用意すべきだった。昨年 9 月に槍・穂高を縦走して以来手入れもせずにいた靴は浸水している。濡れた靴下を脱いでしまって運動靴に穿き替える。

おかみさんが出てきて平熊さんが今夜遅くにこちらへ来ると教えてくれた。

お土産を買って帰途に就く。渋滞に巻き込まれて 4 時間近くかかった。1930、平熊さんに電話したらもう出た後だった。あまりに遅いので心配したヨメがヒュッテに何度か電話をかけたらしいので、無事帰った旨ヒュッテに連絡を入れておく。こまくささんが 18 時過ぎに到着し、食事の後ヒュッテのご主人とどこかの温泉へ出かけているとのことだった。明日は平熊さんと二人で登ることになろう。

 歩行時間 0540
 休憩時間 0100
 合計時間 0640

淋しい山行だった。
右のふくらはぎが痛い。


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