| Homepage | Heavens & Optics | Hiking | Ham Radio & Others | Link | Author | Mail |

No. 127 <北ア>剱岳

1998.09.12.Sat.曇りのち快晴

昨夜は入手したばかりのポケモン・ピカチュウバージョンにはまり込んで寝不足である。(^^;)

仕事を終え、弁当 2 食とお茶を仕入れて帰宅。2 時間ほど昼寝、16 時に起床して出発に備える。

1645 自宅(000km)発 名神・北陸道共に混雑なし。高速巡航。
1830 南条 S.A(191km) 30 リットル給油。
1850 発 新湊、砺波など無線をやるモノには縁のある地名を通りすぎていく。JR9MAR がワッチしているという 1292.50MHz に 100mW でアクセスしたらちゃんと届いた。返事はなかった。

2005 立山 I.C.(367km) I.C.を出てすぐ左折(東向き)すれば上市町・馬場島方面への道標が沢山あって迷う心配はない。
馬場島近くで右路肩に挙動不審な鹿(つがいだろう)が 2 頭。停車すると目の前を左の草むらへ横切って行った。
2045 馬場島着(394km) ファミリーキャンパーで賑やか。早月尾根取付き付近に車を停め、夜食の弁当を済ませてしばらく道路に寝っ転がる。星空が美しい。草むらには虫が鳴き、アマガエルがこちらを見る。
キャンプ場から懐中電灯を照らしつつこちらへ来る人があって尾根取付きを確認しに来たらしい。聞けば明日剱岳を日帰りピストンするという。私にすれば常軌を逸する行為だがこういう達者な人が地元にはかなり多いらしい。
NHK ラジオは大阪の 666kHz がよく聴こえる。地元 648kHz は夜になると聴こえが悪い。
2300 助手席にシュラフを広げ潜り込む。

 走行時間 0330(113km/h)
 休憩時間 0020
 合計時間 0350


1998.09.13.Sun.晴れ

0600 起床 弁当。
剱岳本峰が黒く浮かび上がる。やがて左手からの光線に邪魔されてしまう。
地元や新潟からの車が到着し山の話などする。

今日は早月小屋までなのであまり早く出ると時間を持て余してしまうだろうとのんびり過ごす。
昨夜、エアリア 4.0 万図で現在地の高度を 820m に設定したこの数値に変化はなく、気圧配置が安定しているのだろう。
バテを想定し荷物を軽くするためシュラフカバー、ツェルト、軽アイゼン、水筒を装備から外す。

0730 馬場島発(820m) いきなり急登から始まる。毎度最初の 30 分はしんどいが今回は久しぶりかつトレーニング無しでもあり最後まで苦しかった。気温は高く、太陽が真正面から射すのでカッターシャツなしでも汗が吹き出す。
海抜 1000m と 1200m 付近で道は平坦になり歩きやすい。ブナや杉の巨木に囲まれた良い尾根道である。早月川の流れを聴きながら至極のんびり歩く。
0825 1200m 地点にて休憩
0830 発 階段なみの急傾斜をゆっくり登り続けるが立ち止まることしばしば。
0920 1485m 地点にて休憩 1400m と記された柱がある。どちらが正しいやら。高度計付き腕時計は一年半以上電池を替えておらず誤差が心配。
0930 発 これから先は道がやや細くなり岩や木の根の段差が増える。植物はほとんど枯れ葉を付けており、目立って赤いのはナナカマドの実か?ときおり小動物の移動か、タネの落ちる音か、もの静かで落ちているゴミも少なく気持ちのいい登りが続く。

【ナナカマド?】

1005 1685m 地点・杉の巨木の下で休憩 ドコモ・アナログ(800MHz)圏内確認。この尾根では概ね通話可能の様子である。
若い 3 人組が追い越していった。
1015 発 先ほどの 3 人組はすぐ上で休憩していた。煽られるのは辛いのでいつでもさっさと追い抜いてくれるよう頼んでおく。ガスが巻き始め視界が利かなくなった。雨は降るまいが、、、
1030 手元の高度計は 1745m を指しているが 1800m の標識がある。さて?
1045 1865m 地点で休憩 かなりバテてきた。休憩時間も長くなる。
1105 発 降りてくる 3 人組とすれ違う。

1130 1990m 地点で休憩 旧避難小屋跡だそうで、コンクリートの基礎と鉄筋が見えている。ここで福井からというハイカーに出会う。同じ頃馬場島を発ち、目的地は同じく早月小屋だそうな。根っからのタイガースファンだそうで、いろいろ忘れていたことを思い出させてくれた。バースが国内の年間本塁打記録に迫っていたシーズン終盤、これを邪魔したのが巨人の王監督で 12 連続四球だったそうな。
ちょっと聞いたことがあって確認するために尋ねてみた「福井、石川、富山はお互い仲が悪いそうですね」「富山の詐欺師・石川の泥棒・福井の乞食」との返事であった。よく分からんが面白い。

空腹感はなかったが軽食を採る。今回はグリコのバランスオンというクラッカーを持って来た。スイートコーン味は当たり前だがコーンの香りが広がりなかなかよい。2 枚ほど口に放り込んでバリバリ噛み砕き水を少し口に入れグジャグジャと飲み込む。定番のチーズカマボコ数本。
やがて 3 人組が上がってきてまだまだ小屋に着くのが早すぎるとばかりコンロを出してラーメンなど煮始めた。彼らは結局ここに 2 時間ほどいたらしい。福井のハイカーが出発して間もなく私も出発する。
1200 発 左手に小さな池が 2 つあり、ギンヤンマが根城にしている。渕にはオタマジャクシが多数。大きなノイチゴを 1 つだけ見つけた。真っ赤だがかなり酸っぱい。
1255 早月小屋(2240m)着 やれやれ。宿泊手続きを済ませ部屋に上がって窓にシャツとタオルを掛けてからまた外に出て缶コーラを飲む。ガスはやがて切れ、剱岳や尾根群が見えてきた。日も射して濡れた衣類は乾いた。
携帯電話圏内確認。

 歩行時間 0410
 休憩時間 0115
 合計時間 0525

【小屋から山頂を望む】

【紅葉の早月尾根】

【早月小屋前の花】

夕食は 1730 から。雲海に沈みつつある太陽を眺めていた連中は小屋の奥さんに呼ばれ、戸惑いつつ食卓に着く。食事を早目に済ませた人はまた外に出て写真など撮っている。日没は 1800。

【大日岳方向の雲海】

行動時間が短く小屋に着いてから昼寝もしたため眠れまいとブツブツ言っていた福井の人は隣で真っ先に眠り込んでしまいそのいびきの凄いこと。こちらが眠れんぞ。2000 頃床に就くが眠りは浅かった。


1998.09.14.Mon.晴れ

0530 起床 眠りが浅かったせいか一番最後に寝ぼけた顔で起き出す。すぐに朝食。早い人は 0600 には出ていった。
0630 発 例によって煽られたくないので最後に出発した。さほど寒くなくウールカッターが鬱陶しい。
しばらくは歩きやすい道が続く。

0745 2585m 地点にて休憩 2600m の標識がある。カッターを脱ぐ。
0750 発 昨夜の登りがトレーニングになったのか、体がやや軽い。

0820 2665m 地点 正面から射していた太陽が剱岳に隠れ寒く感じるのでカッターを着る。天候は良いが地平線付近はガスのため遠望が利かない。
0850 2790m 地点にて休憩 あと僅か 200m の高度差だが、上方遙かに見える頂上はまだまだ遠く感じる。

0900 発 暑くも寒くもなく風も適度で快適な稜線歩きである。この先岩場・鎖場になるのでストックをザックに括り付ける。
ところどころ少し下ったりのおよそ平坦な但し細い道が続く(石英の塊多数確認。水晶はない)。やがて岩が青っぽくなって鎖が見え出すと危険地帯に入る。登りではさほどでもないが一箇所トラバースする部分は奥穂高・ジャンダルム付近を思い出させる。右手に室堂、立山が見えてきたら頂上は近い。先ほどから白山が見えている。

【室堂から前剱岳へのルート】

0950 剱岳着 ガスは晴れてきて遠望が開けてきた。立山の真上に槍ヶ岳、前穂高岳、奥穂高岳、ジャンダルム、ロバの耳まで肉眼で見通せる。間もなく富士と八ヶ岳も確認。一方日本海ははっきりせず、上市町あたりは分かるが富山市、能登半島は分からない。佐渡らしい陸影が見えたが確認できず。

【立山の向こうに槍・穂高】

低山徘徊派・あきゆきさんの勤務先に電話を入れる。会議中だそうな。ひょっとしてあとでかけてくれるかもと電源を入れたままにしておいたが、頂上祠の東側で休んでいたため携帯電話の通話状況は微妙であった。
2FU さんと自宅にも電話を入れる。富山市方向が見通せる場所では通話は問題ない。このアナログが間もなく廃止されることは残念である。

【剱岳頂上にて】

頂上には剱沢方面からのハイカーなど全部で 40 - 50 名はいただろうか。随分賑やかだった。
賽銭 200 円。手を合わせる。無事下山できますよう。滞在した時間帯も良かった。下山する頃にはガスがかかり始める。心残りのないようずいぶんのんびりしてから下山にかかる。

【頂上から早月小屋、馬場島を見下ろす】

1120 発 早月方面へ下る人数はあまり多くない。100m 程下に下山中の 3 人組を見ながら似たペースで降りていく。

頂上直下の岩場は下りが恐ろしい。新しい鎖が張ってあるがなるべく頼らないようにのんびり下っていくとやがて上から小石の転がり落ちる音が聴こえる。落石を喰らってはつまらんので先に行ってもらおうとちょっと広い場所を見つけて振り返った途端、目の前に地下足袋、ナップザック、麦わら帽子の爺さんが立っていた。地元のお百姓にも見える。年齢は 50-60 歳くらいだろうが老けて見える。その爺さん曰く「下に 3 人組のねえちゃんがおったろう、せっかく鎖があるのに使いもせず下を見ながらゆっくり歩いちょった。山登りを知らんのか。この鎖が切れるもんかね」
呆気にとられる私を尻目に鎖に捕まり、後ろ向きになって凄いスピードで下っていった。その後何度か探したが 3 人組を追い越して瞬く間に視界から消えた。日帰りピストンの忍者かも?

【頂上直下の岩場】

1205 2790m 地点にて休憩 登りと同じ位の時間がかかっている。嫌な予感がする。カッターを脱ぐ。
下の方に小屋と広場のようなものが見える。高度差から考えて早月小屋ではない。2600m 付近と思われるが避難小屋跡だろうか。結局それらしい場所の横を通過した気がしたが確認はせず。
1210 発 日頃の不摂生がたたり始めたか太腿に力がない。危険地帯を抜け、平坦な道に出て少しでも登りがあると参ってしまう。

1235 2600m 空腹を憶え携行食を口に入れる。
1245 発 段差の激しい道はそれでも歩きやすくなり、ハイマツ帯に入る頃ガスが巻き始めた。太腿は苦しいが 2500m 付近から早月小屋を視認し少し元気になる。
朝、小屋のすぐ上で握った枝から松脂をもらってしまったが、下りでも同じ事をやらかした。香りはいいのだがベタベタしてかなわぬ。

1345 早月小屋 ホッとするがしかし馬場島までは 1/3 を終えたに過ぎない。果たしてこのまま下りきる事ができるのか不安がよぎる。当初の予定ではここにもう一泊だったが、シャツ、タオルは雑巾と化し洗う術もなく着替えは車に積んだまま。このまま寝ることはさすがにためらわれる。とにかく缶コーラを求め、靴を脱いで大休止とする。
昨年の記録ではここから馬場島まで 3 時間なので、疲労を考慮しても 4 時間、日没頃には下れるだろうと踏んだ。

1430 発 不安がすぐに現実となった。下りでブレーキをかける太腿に力がない。この後記録にはないが随分途中停車している。記録を取ったり景色を鑑賞する余裕など既になく不安に追われる近年最悪の下り道であった。
ギンヤンマの池で残り 2 コマを撮り、カメラをザックに片づける。

1500 旧避難小屋跡 まずは早速の休憩。
1505 発

1630 1515m 1400m の標識あり。
1645 発

1750 1200m 空腹を憶えたのでチーズカマボコ数本まとめて食べる。こまめに食べる必要性すら忘れていた。
1800 発 食べたせいか体が少し軽くなった。そろそろ日没の時刻で樹林に被われた部分は汗に曇るサングラスと相俟って足元がよく見えない。

1825 ヘッドランプを取り出す。軽量化のためミニマグライトを持って来たがやはり 6 ボルトの明るいライトが欲しいと思った。
ストックをつき、転倒しないよう気をつけながら微速で進む。あたりは真っ暗でただ道が広くなってきたのが有難い。

記憶にある 1200m と 1000m の平坦部分に差しかかりあとは最後の急降下に気をつけるだけ。
流れの音と馬場島山荘と思われる光が見えてきた。安心するには早く、これがまたなかなか近づいてこない。

これで最後と思われる急降下の長かったこと。ひょっこり平坦な広場に出たときの気分はなんとも表現しがたい。
先日賑やかだったファミリーキャンパーは一組だけ。彼らのライトが上から見えていたのだ。
1900 馬場島着

 歩行時間 0915 以下
 休憩時間 0315 以上
 合計時間 1230

車の横でまずは靴・靴下を脱ぎ、シャツを脱ぎ、眼鏡を外して体を冷やす。のろのろと帰り支度をはじめるが脳も疲れているのだろう、はかどらない。風呂に入りたい、腹が減った。ホットコーヒーを飲みたい。

1935 馬場島発 舗装されたしかしときおり一車線になる林道をゆっくり下っていく。来たときと多分同じ場所か、また鹿のつがいを道路脇の草むらに見つけた。

上市町に出て北アルプスナントカセンター横の温泉を探すが見つからない。アイスクリームの店を見つけたのでイチゴアイスを買ったついでに尋ねたら真正面にあるのだが月曜日は休みだと。しかも 21 時には閉まるそうな。
風呂は諦め、使わずにおいた綺麗なタオルで体をぬぐい、新しいシャツに着替える。

2050 立山 I.C. くたびれているので低速巡航。交通量の少ない北陸道で次々と追い越されていく。

2120 小矢部川 S.A. 最初のサービスエリアに飛び込み、カレーライスとホットコーヒーを注文する。このレストランも 22 時閉店だそうで危ないところだった。ベンチに横になったりゆっくり休む。30 リットル給油。

2245 発 カレーを食べて元気になったか、高速巡航に切り替える。名神に入るや交通量が増え、運転にさらに注意を要する。

ちょっと面白いことがあった。追い越し車線を走っていると後方から急速に迫ってくる車がある。一旦道を譲ってから、アクセル全開でそいつを追いかけてみた。ポルシェのようだ。道はそれほど空いていないのですぐに追いつく。前の邪魔な車が消えるとまたそやつは急加速する。すると私も後ろにつける。何度かやっているとさすがに向こうさん、こちらを警察かと感じたかスローダウンした。私も速度を落とし、のんびりモードに戻る。

2505 吹田 I.C.

2515 自宅着

荷物の片づけもそこそこにシャワーを浴びて就寝。(-_-)..zzz...


| Back |