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2005年07月17日
うるう秒挿入で判明した軌道計算プログラムのミス
先日、『まあ、うるう秒が挿入されたからといって慌てて対策をしないといけない人はほとんどいないと思いますが。』なんて書いたのですが、実は慌てました。うるう秒挿入なんて自分には関係ないと思っていたのですが、大有りでした。
軌道計算プログラムを修正しないといけません。
なぜかというと、世界各地から届く彗星や小惑星の観測データは時刻が世界時(我々が一般に使っている日本標準時-9時間)ですが、この世界時は前記のように1秒挿入したり削除したりして、頻繁にずれます。これではまともな計算ができないので、"修正されない時刻系"のひとつである、力学時に変換して計算しています。力学時は原子時より32.184秒進んでいますが、修正されないので計算に都合が良いのです。 うるう秒が挿入されたり時刻系にその他修正があるときは、それらを考慮して力学時を計算しなければならないのです。
「うるう秒が挿入されるのですが、OrbitLifeではどのようにすれば良いですか」という問い合わせがあるまで気づきませんでした。まったくお恥ずかしい....(OrbitLifeというのは私が作成して、インターネットで一般公開している軌道計算プログラムです)。
プログラムを修正しようと電卓でいろいろ計算していたら、なんか...、変!
調べるまでも無く、1991年1月1日のうるう秒の挿入までしか対応していないことが判明しました。
ガ~ン。
その後6回のうるう秒挿入があったので、力学時が6秒ずれたまま計算していました。まさかこんなミスがあったなんて。
実はその1ヶ月ほど前に、ある軌道計算者から「OrbitLifeは近日点日が数秒ずれているようだ」とのメールが届いていたのです。数秒の"誤差"ではなく、"ずれている"という表現で。しかも、「力学時の計算はどうやってますか」という的を突いた内容でした。
近日点日は一般軌道の場合小数点以下5桁目までで表現するので、数秒のずれは最小桁に現れます。私は、この最小桁のわずかな違いからは「ミスがあるのでは」とは気づきませんでした。他の軌道要素との関係から生じる結果だろうと考えていたのです。
本気で計算に取り組んでいる人からの指摘はもう少し真剣に話を聞かなければならないと反省しました。
うるう秒挿入がなければ永遠にこのミスに気づかなかったかもしれません。
ちなみに、「うるう秒が挿入されるのですが、OrbitLifeではどのようにすれば良いですか」と問い合わせてきた人は、その軌道計算者だったのでした。
重ね重ね、お礼申し上げます。
2005年07月16日
1秒プレゼントのカラクリは、うるう秒(閏秒)の挿入です。
昨日の記事では"1秒のプレゼント"なんて書いてしまいましたが、一般には"うるう秒の挿入"と言いまして、1~2年に1回、1秒余計に時間を刻むことを言います。詳しくはWikipedia - 閏秒をご覧ください。
結構頻繁に行われているんです。でも、今回は珍しく5年ぶりのことです。
この、うるう秒が挿入されるという知らせのメールに案内されていた英語のウェッブページを見ると、時刻のカウントのしかたが以下のように書かれていました。
2005年12月31日23時59分58秒
2005年12月31日23時59分59秒
2005年12月31日23時59分60秒
2006年 1月 1日 0時 0分 0秒
ご覧のように、いつもは存在しない"59分60秒"という時刻を挿入するんです。
「新年おめでとう!!」の前に1秒だけ「待った!」をかけて、新年となるわけです。
これをネタに変則カウントダウンでもやってくれるテレビ局が現れてくれることを期待して、その旨メールに返信したら、
「それは世界時での話です。」
という冷静な返信が......。
お恥ずかしい。そうでした。
日本時間は世界時より9時間進んでいるので、日本での新年はいつもどおりのカウントダウンです。
日本時間では以下のようになります。
2006年1月1日8時59分58秒
2006年1月1日8時59分59秒
2006年1月1日8時59分60秒
2006年1月1日9時 0分 0秒
9時になったらあなたご自慢のそのスイスの名工が作った腕時計も1秒進んでしまうのでご注意を。
電波時計やタイムサーバーに同期させている情報機器は次の同期タイミングで自動修正されます。
まあ、うるう秒が挿入されたからといって慌てて対策をしないといけない人はほとんどいないと思いますが。
2005年07月15日
忙しいあなたに1秒のプレゼント!!
いやー、忙しいですねえ。
あれもやらないといけない、これもやらないといけないと、1日24時間では足りなくて、睡眠時間を削って活動している人は多いのではないでしょうか。
そんなあなたに朗報です!
2006年1月1日午前8時59分59秒(日本時間)に1秒(たった1秒)だけプレゼントされます。
(世界時でいうと2005年12月31日23時59分59秒)
締め切り間際の1秒って貴重だと思いませんか?
え?訳のわからない事言ってんじゃないって?
本当のことなのに.....。
2005年07月11日
暗黒の中にも情報は満載
天体を観測するときは天体望遠鏡にフィルムカメラやCCDカメラを用いてできるだけ明るく写そうと努力するわけですが、それでも真っ暗な画像しか得られないときが多いです。でもあきらめません。一見真っ黒な画像でも、しっかりと必要な情報は記録されているのです。以下に、わかりやすい例で説明しましょう。
下の画像は先ごろ天狗高原に行ったときの観測風景です。月明かりも街灯も無い真っ暗な中で、同行したKさんにデジカメで1分間シャッターを開けっ放しで撮っていただいたんですが、右にわずかに望遠鏡が写っているのがわかるだけです(見た目もこんな感じでした)。
![[画像処理前のもの]](http://www.comet-web.net/mira/Photo/Hitorigoto_2005/D20050625_tengu_1.jpg)
ところが、少し画像処理すると下のような画像を得ることができます。一見真っ暗な画像にもこれだけの情報が記録されているんです。駐車場の向こうは草原になっていて牛が放牧されています(この画像からは牛は確認できません)。その向こうの遠くには小高い山(丘)がいくつか写っています。この画像は強く圧縮されたJPG画像なのでこれ以上処理しても汚くなるのですが、圧縮されていない画像を用いてさらに強烈に画像処理すると、昼間のような雰囲気の画像が得られます。
![[画像処理したもの]](http://www.comet-web.net/mira/Photo/Hitorigoto_2005/D20050625_tengu_2.jpg)
どうですか、このテクノロジーのすばらしさ。
私たち天文家はこんな技術を用いて観測しているんです。
2005年07月07日
ディープインパクトの報告が少しずつ集まってはいますが...。
衝突して30分後には0.5等ほど明るくなって、淡くボーーッとしていた彗星が少し恒星状に変化したようです。あれだけのすさまじい衝突にもかかわらず、わずか0.5等しか増光しなかったことは意外でした。海外で分光観測していた人によると、明るくはなったが、衝突の衝撃で粉砕した物質が光をさえぎるのが観測されたそうです。殻は打ち砕いたが、意外と厚く中身を噴出させるにいたらなかったと言う感じでしょうか。
ところが、ハッブル宇宙望遠鏡も観測していて、Hubble Monitors Evolution of Dust Plume Following Deep Impact's Collision with Cometに掲載されている画像を見るとかなり明るくなっています。このページには動画も掲載されているのですが、これを見ると彗星が壊れたんじゃないかと思うくらいの衝撃が走っています。これだけの現象が起きているのに、地球ではわずか0.5等程度の増光にしか見えないんですね。
じゃあ、突然2等級も増光する時がある 29P/Schwassmann-Wachmann彗星 なんかいったいどんな現象が起きているのでしょうか!今回の実験はそれを想像するのにも役に立ちそうです。
2005年07月04日
ディープインパクト(彗星衝突実験)大成功!!
7月4日14時56分ころ、NASA(アメリカ航空宇宙局)などが6年の歳月をかけて取り組んだ斬新な観測計画、ディープインパクト(国立天文台による案内)が成功しました。この様子はNASA TVでライブ放送されました。衝突の2分前ころからアクセスが集中したのでしょう、画面は静止画状態となってしまいましたが、衝突の直前にクレータのある月のような画像を2コマほど見ることができました。次に画面が動いたのは数分後のことでしたが、明るい表情の管制官や、めがねの内のまぶたに手を触れる管制官を見て、成功したなと思いました。
次に気になるのが、彗星の変化です。
ついに彗星観測者(自称)である私の出番です!
.....。
うーーん......。
さすがに、稲光を伴ったこの大雨の中では”一瞬のチャンスを逃さないように”という気力すらわきません。沖縄地方の観測者に期待です。それと、北海道....、網走付近に晴れ間がありますかねえ?
って書いているうちに、日本の彗星観測者たちのメーリングリスト comet-obs ML にハワイ島からの速報の観測データが投稿されました。
さらに、今OAA彗星課メーリングリストにも衝突の瞬間のアニメーション画像が投稿されました。
天文学者たちも「ぶつけてみないとわからない」と一様に言っていたので、貴重な成果が期待されています。
日本からハワイなどに観測に出かけている彗星観測者が何人かいるので、のちほど詳しい様子が伝えられることと思います。
NHKはハワイのスバル望遠鏡にハイビジョンカメラを装着して観測しているはずなので、今ころ大急ぎで編集作業していると思います。NHKの番組にも注意してください。