1.はじめに
左の画像はハッブル宇宙望遠鏡が撮像した銀河の中でも特に知られている『車輪銀河』です。初めてこの画像を見たとき、”綺麗な絵だなあ”と思いました。いやいや、本当は写真(デジタル画像)なんですが。この画像が公表されたのは、おそらく1994年の年末頃だと思います。当時はインターネットがまだ一般的でなかったので実際にはそれからしばらくして出版物によって知ったと思います。
『こんな美しい銀河が宇宙のどこかにある.......。』
初めてこの画像を見た時から、”どこかにある美しい銀河”として心の中で生きつづけてきました。
それから数年、『ど素人天体写真家』の称号を得た私は、宇宙のことが少しずつわかってくるとともに、この天体の実際の位置を知りたくなりました。ですが、ハッブル宇宙望遠鏡で撮像されたこの画像が公表されるまで、一般にはまったくと言って良いほど注目されなかった銀河なんです。地上には巨大な望遠鏡がたくさんあり、よほど小さな銀河でも何らかのカタログに掲載され一般に知らされているにもかかわらず.......。
私は、おそらく「南半球じゃないと見られない位置にあるのだろう」と思って実際に位置を調べる努力はしませんでした。
でも、やはり気になります。
見られなくてもいいから、実際の位置を知りたい!!
私はインターネットを使って車輪銀河に関するあらゆる情報を集めることにしました。
2. あれ?どこにあるのだろう
まずどの星座にあるのかをインターネットを使って調べてみましたが、これは非常に簡単に判明しました。どのサイトにも『ちょうこくしつ座の方角、5億光年にある......。』と紹介されているからです。これで一安心です。ちょうこくしつ座は少し南に低い星座ですが、日本からは見られます。
次にちょうこくしつ座と言っても横に広いです。もう少し詳しい位置を調べないと撮影できません。さらにインターネットを使って調べてみました。ところが、どこにも掲載されてない!!
え?ここも載ってない。じゃあ、ここは?他の銀河の位置は掲載されているのに車輪銀河だけ空白になっている....。あれれ?どうなってんの。
まさか、『ハッブル宇宙望遠鏡が適当に向けて撮影したら、たまたま変わった銀河が写っただけなので場所がわからない』なんてことはないでしょうけど。
検索エンジンの条件をいろいろ変えて検索してみました。
お、ありました。海外のサイトにいくつか見つかりました。
まず、
(1)March Observers Group Meetingというページに直リンク。
0h 37.4m, -33°45' と書かれています。念のためにもう少し情報を集めてみました。
(2)ブルガリアの天文サイトの中のデータベースを見てみましょう。
00:37.4 -33:44 と書かれています。ほんのわずか異なっています。
(3)フランスの天文サイトの中のデータベースも見てみましょう。
00:37.4 -33:44 と書かれています。
(4)しめくくりに NASA/IPAC EXTRAGALACTICの中から。
00 37.4 -33 44 完璧ですね。
これで撮影には十分な精度の位置が判明しました。
(参考) なぜこんなに念入りに調べたのかというと、この後紹介するサイトには秒(”)単位まで詳細に測定されているのですが、どのサイトも位置が異なっているのです。本当に正確な位置(秒単位まで)はどれが本当なのだろうと思い、それを追求しようと思いましたが、秒まで調べなくても十分撮影できることがわかったのでこれ以上の調査は止めました。
3. だれか撮影してないの?
この広い世界、だれか撮影しているはずです。探しましたよー。探しました!
いくつかのサイトを見つけましたのでご紹介します。
(1)なんと!我らが国立天文台が撮影していました。
http://www.nao.ac.jp/pio/Galaxies/cwg.jpg
すっごい設備で撮影していますが、地球上からもリング状に撮影できることがわかります。
(2)海外にはこんなのもあります。
http://www.astro.rug.nl/~jhigdon/works/cw_atlas.html
(3)さらにはロシアのこんなのも
http://www.xware.ru/db/msg/1168911
(4)がんばって撮影したこんなのも
http://www.hwy.com.au/~sjquirk/images/cartwhl.html
(5)アフリカのナミビアで撮影されたこんなすごい画像も
http://www.astrofoto.com/astro/cartwhel.jpg
(6)オーストラリアのアマチュア天文家が”アマチュア用機材”ですばらしい画像を撮影しました。Meade LX200 F6.3 に ST-7 冷却CCDカメラを用いています。
http://www.home.gil.com.au/~brdowns/e350g40.htm
(7)栗田直幸さんも山梨県大泉村で捕らえました
http://www.ne.jp/asahi/stellar/scenes/object/cart.html
どうですか!!
車輪銀河は透明度が良くて大気が安定していればアマチュア用機材でも撮影できる可能性があります(北の方の地域ほど困難になりますが)。
光度は14等級のようです。ぜひ冷却CCDを持っている人は腕試しというか性能試しをしてみませんか。
撮影できたらぜひご連絡ください。このページでご紹介させていただきたいと思います。
4. (その後)自分で撮像してみました
2003年8月、ついに冷却CCDカメラを入手した私は車輪銀河を撮像するチャンスをうかがってきました。その夏は夜になると黄砂のように透明度が悪くなり近くの山もぼやけるような異常気象がつづきました。9月21日に台風が通り過ぎたのですが、その夜はこれまでの鬱憤をはらすようなすばらしい星空が広がりました。チャンス!!とばかりにちょうこくしつ座が南中する時刻を狙って車輪銀河に望遠鏡を向けました。追尾精度が悪いので1分露出が限度です。輪が写らなくても、存在だけ写ればそれで十分と思って撮像してみると、なんとノイズレベルぎりぎりながら輪が写ったではありませんか。これなら何枚も撮像してコンポジットすればどうにかなりそうだと思い、何枚も何枚も写し、追尾精度の比較的良好なものをたくさん集めました。試しに3分露出もやってみるとどうにか1枚だけ正確に追尾してくれました。
下の画像は3分露出のものを1枚と1分露出のものを数枚コンポジットして、画像処理のテクニックの限界まで使い、やっとのことで車輪銀河風に仕上げました。
どうですか、アマチュア用の安価な機材でもここまで写るのです。ちゃんとした追尾システムを持っている人ならもっと美しい車輪銀河が得られるでしょう。ぜひ皆さんも挑戦してみてください。
私が撮影した車輪銀河
2003年9月22日 0時54分
望遠鏡:CELESTRON C8 (F10=2000mm)
冷却CCDカメラ:BITRAN BT-10
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このページの天体写真は特に明記しているものを除き、すべて私(Mira)が撮影したものであり、天体写真の著作権はMiraが所有しています。
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