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17P/Holmes

2008年02月03日

 ペルセウス座β星の近くをゆっくり移動中である。眼視観測者によると5.5等と報告され、肉眼で観測することは困難なほど暗くなってきた。
 下の画像の中央付近にある少し拡散した天体がホームズ彗星の核である。核光度は15.8等と測定した。今でも大きなコマがあるはずなのだが、横幅が17分角の画面を覆っているのだろうか。しかし良く見ると画面の半分以上がごく淡いながら楕円形に白っぽく写っているので、これがコマなのかもしれない。

0017P         C2008 02 03.48875 03 18 57.95 +39 51 10.5                      D70
0017P         C2008 02 03.48992 03 18 57.93 +39 51 10.1                      D70
0017P         C2008 02 03.49094 03 18 58.04 +39 51 09.0          15.8 N      D70

2008年01月05日

 拡散しつつあるホームズ彗星であるが、眼視観測者による全光度は3.9等~4.1等程度で報告されており、かなり穏やかな減光という印象だ。今夜は月明かりの無い夜で、冬の天の川がどうにか見られる透明度である。小さな双眼鏡で楽に見つけることができた。ただ以前のような”白い雲が浮かんでいる”という感じではなく、双眼鏡を動かしたときに、なにかあるなあと感じる程度で、固定するとその存在に気づかないかもしれない。
 CCDによる画像は下の通りである。画像の横方向の画角は17'である。コマの視直径が60'~80'と報告されているので、ごく中心部しか捕らえていないことになる。矢印の先にあるぼ~っとしたものが彗星の核で、核光度は15.5等。コマは画像全体を覆っているので月明かりの明るい空で撮像した感じに写っている。
0017P         C2008 01 05.52921 02 59 33.11 +43 23 11.1                      D70
0017P         C2008 01 05.53071 02 59 33.13 +43 23 09.9                      D70
0017P         C2008 01 05.53313 02 59 33.20 +43 23 08.6          15.5 N      D70

2007年12月02日

 月が東の低い山から昇ってくる0時30分までどうにか観測できた。まるで透明度の悪い満月の夜に14等級の彗星を撮像したかのような画像になった。他の観測者からは、この日、コマが50'近くあることが報告された。この画像は横幅が17'なので、コマの中心部のごく一部しかカバーできていない。全体的に白いのは空が明るいのではなく、全体が彗星のコマで埋まっているのだ。これだけ巨大な彗星は珍しい。
 肉眼でも見えていて、近くにあるペルセウス座二重星団の半分程度の印象だ。双眼鏡では丸くて白い、かなり淡い雲状に見える。月が昇ってきたら見えなくなる感じだ。

0017P         C2007 12 01.60291 03 10 54.95 +48 52 17.3                      D70
0017P         C2007 12 01.60409 03 10 54.79 +48 52 16.7                      D70
0017P         C2007 12 01.63891 03 10 52.84 +48 52 00.0          14.0 N      D70

2007年11月24日

 今夜は雲が全く無く気温も比較的高めで風もほとんど無いが、残念ながら満月で、カシオペア座のε(3.3等)すら見づらい夜だった。
 小さな双眼鏡やファインダーでは月明かりが強烈で確認できなかった。
 20cm望遠鏡に冷却CCDで撮像してもコマは写らず、ぼやけた彗星核のみが写った。他の観測者によるとコマはその後どんどん広がっているようなので、実際には画面から大きくはみ出しているのかもしれない。月の影響が無くなるのを待って再度観測したい。
 核光度は13.6等で徐々に暗くなっている。

0017P         C2007 11 24.57588 03 18 09.96 +49 42 01.5                      D70
0017P         C2007 11 24.58229 03 18 09.58 +49 41 58.8                      D70
0017P         C2007 11 24.58679 03 18 09.29 +49 41 57.6          13.6 N      D70

2007年11月03日

 塩塚高原展望台(頂上に近い駐車場)で観測を行った。
 眼視観測では前回(10月27日)より少し大きくなった感じがし、南西(右下)にコマが流れているように見える。CCD撮像の画像処理すると恒星のように見える彗星核から鋭いジェット状の噴出が確認できる。下の画像は白黒であるが、他の観測者によるカラー画像でもほぼ白黒で写っている。
 光度は正確には測定できないが2.5等前後である。


 上の画像から核周辺の様子を調べるために画像処理を行った。当初2つの核があるのかと思ったが、尾がちょうど向こう側に流れているのでそのように写ったもののようである。

0017P         V2007 11 03.51023 03 43 22.89 +50 36 15.5          10.6 N      247
0017P         v2007 11 03.51023 1 133.6877   +33.9230     970                247
0017P         V2007 11 03.51618 03 43 22.45 +50 36 16.1          10.6 N      247
0017P         v2007 11 03.51618 1 133.6877   +33.9230     970                247
0017P         V2007 11 03.59248 03 43 17.08 +50 36 22.8          10.6 N      247
0017P         v2007 11 03.59248 1 133.6877   +33.9230     970                247

2007年10月27日

 約7年で太陽を一周する彗星がアウトバースト(爆発現象)を起こした。この彗星は2007年5月に太陽に接近した後遠ざかりつつあり、最近では17等級(60cm反射望遠鏡でも見えないほど暗い)というかなりの暗さで観測されていた。
 アウトバーストの情報が飛び込んできたのは10月24日21時ころだった。海外での7等級に増光という情報が最初で、その後時間が経過するたびに国内の観測者から少しずつ明るい報告が入りだし、深夜には4等級まで増光しているという情報が入った。翌明け方には2等級に増光して、ここで増光は止まっているようだとの情報が入ってきた。
 翌日観測したくても天気が悪く、27日になってやっと観測できた。
 彗星の方向に満月が輝いていて透明度は良好なものの明るい恒星しか見えない。情報では肉眼で見えているという。望遠鏡を組み立てる前に小さな双眼鏡で周辺を探してみると....。あった。周辺がぼ~~っとした明るい天体が。こりゃ大変だ、雲が出る前に早く撮らなければと大急ぎで望遠鏡を組み立てた。いつもは正確に導入したり追尾するために3点アラインメントして微調整するのであるが、そんな時間のかかることはやってられない。クランプをゆるめて手動でいきなり導入した。小さなファインダーでもぼ~~っとしていることがわかるほどだ。CCDのピントモードで連続撮像しながらパソコンの画面を眺めると、画面の中心部に真っ白く真ん丸い巨大なものが写っていた。シャッター速度を5秒にしても明るすぎて飽和してしまう。結局3秒で飽和せずに写すことができた。観賞用としては多少飽和しても大丈夫であるが、位置を精密に測定しようとすると重心が計算できないので具合が悪いのである。いつものように位置測定用に2x2ビニングで10枚撮像した。これさえ撮っておけばもう思い残すことはない。
 彗星の色にも興味があるところだ。多くの彗星は青白いのだが、この彗星は黄色いという情報であった。そこでめったにやらないRGBカラー分解撮像をやってみた。対象が非常に明るいので、青感度の低い私のCCDでも十分な露出時間をとることができて良好なカラーバランスに仕上がった。下の画像がそれである。一見白黒画像に見えるが、カラー画像である。けっして青白くは見えない。ほぼ白で、中心部が少し黄色っぽく見える。



 彗星核にも興味があったのでこんどはビニングを行わずに高解像度で5枚撮像した。撮像しながら簡単に画像調整して確認してみるとコマの中央部分に恒星が入っていて見栄えが悪い。恒星がコマの中に入ると全光度を測定するのにも面倒なのである。双眼鏡で眺めたり運動したりしながら時間が経過するのを待って再度撮像....。まだ恒星がある。なかなか出て行ってくれないので、この彗星は移動がものすごく遅いなあと思いながら撮像を続けた。


 帰宅してアニメーション処理してみて驚いた。彗星のコマに寄り添うように恒星もいっしょに移動していたのである。そりゃ、いつまで待っても離れてくれないわけだ。
 上の画像は高解像で撮像したものを核周辺がわかりやすいように画像処理したものである。
 この恒星に見える部分が彗星核なのだろうか。しかしコマの部分にも少し離れたところにきれいに集光している部分がある。普通はこのぶぶんに核があるのだが。しかし、恒星に見える部分から南西方向にガスが噴出してそれが丸くなっているようにも見える。
 もしかして、核が2つに分裂してしまったのだろうか。
 コマの中心部分を測定したのが下の画像である(南北(上下)が逆になっている)。


 中央に集光しているもののかなりなだらかで、この中に核があるような感じではない。とすると、やはり核が分裂しているのではなく、なんらかの作用が働いて噴出したガスが丸くなっているのだろうか。
 全光度は2.5等と測定した。ほとんどの場合ここまで明るくなるときは太陽にも近づいているので長い尾があるのだが、この彗星は現在太陽から約2.5AUも離れているので尾が見えず、丸い拡散状で非常に不気味な感じがする。彗星というよりも巨大な惑星状星雲といった感じだ。
 彗星はペルセウス座にあり、ほぼ一晩中観測できるので、後日再度観測してみたい。

0017P         C2007 10 27.47465 03 50 43.75 +50 18 26.3                      D70
0017P         C2007 10 27.47769 03 50 43.59 +50 18 26.7                      D70
0017P         C2007 10 27.51218 03 50 41.53 +50 18 35.2          2.5  T      D70

 
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